フライ初心者にサーモンは釣れるのか 3
2016.10.18 Tuesday
キャンベル・リバーは増水でブロウ・アウト。
オイスター・リバーは川にサーモンがいない。
ビック・クィルカム・リバーも増水でダメ。
藁をもすがる気持ちで地元のフライショップに駆け込んだ2人組。
最後の川リトル・クィルカム・リバーではたしてサーモンは釣れるのか。
今季、私はリトル・クィルカム・リバーではキング・サーモンの釣りでとてもいい思いをしていた。そのプールはブリッジのすぐ上流なのだけど、やはりここも水位が上がり流れは早かった。そこで二人のフィッシャーが釣っていたけど、サーモンのいる深みにフライを届けるのはちょっと難しそうだった。そのプールを横目で見ながら二人のフィッシャーに軽く挨拶し、コートニーが教えてくれたポイントを目指して上流へ向かってトレールを歩く。15分ほど森を歩いてそのポイントの手前に着いたのだけど、生憎二人のフィッシャーがすでに釣っていた。仕方がないので、以前私も釣ったことがあるひとつ前のプールで釣ることに。このプールでも時折サーモンがジャンプしていたので、そこそこ数はいる模様。川幅は狭いのでスティーブのキャスティングでも問題ないはずだ。
コートニーが教えてくれたポイントのひとつ前のプールでサーモンを掛けたスティーブ。
このポイントは狭いながらもビーチ・ランディングする場所があった。
AirfloのSuper Fast Sink 10feet + 15ポンドのフロロ・ティペット5feetをラインに付けるように指示し、フライもダンベルアイの付いたやや重さのあるブルー系のフライを結んでもらう。ちょっと流れがあるのでキャスティング後のラインのメンディングの説明をした。プールは小さかったけど上下に分かれて二人で釣ることは問題なさそうだった。釣り始めて5分ほどでスティーブのロッドが弧を描き、穂先が細かく振動しているのが見えた。Hey, you fish on!!! 早速サーモンがフッキングしたみたいだ。先日、スークで何匹かランディングしているスティーブは比較的冷静にファイトしていた。流れがあるのであまり無理しないで少し時間を掛けるように言うと、OK!と頷く。流れの中にいるサーモンは、サーモンの強さに流れの強さが加わるので、フラットなポイントで釣る同じサイズのサーモンよりもはるかに強く感じる。7、8分ほど流れの中でプレッシャーをかけられたサーモンは疲れが出てきて次第に岸へ寄ってくる。スティーブは岸の後ろに下がって無事ビーチ・ランディング。スークよりも流れのあるいわゆる普通の川で、しっかりとサーモンを釣ることが出来た。お見事、スティーブ。
サーモンの持ち方がちょっとぎこちないスティーブ。それでも大したもの、ちゃんとランディングできたのだ。
写真を撮り、釣りを再開するとすぐに今度は私のロッドにアタリがきた。サーモンはまったく見えなかったけど、首を振る動きがロッドを通じてグイ、グイと手に伝わる。あ、ちょっと大きいオスかも知れないと思った瞬間、目の前で大きなジャンプを2回。フレッシュなチャムのオスだ。5分ほどやり取りした後も手前に寄ってくる気配はない。海から入ったばかりのチャムは相当に強いのでもう少し疲れさせないと無理だ。ところが突然、ラインの力が抜けた。ラインを引き寄せフライを見るとサークルフックは外に少し開いてしまっていた。ああ、またか。フックが曲がらない程度にプレッシャーを抑え、もっと時間を掛ければランディングできるのかも知れないけど、かと言ってサーモンの動きで突発的にフックに力が掛かることは有り得るわけで、フックが開いてしまうかどうかはフッキングの場所に依るのだ。口の内側に掛かるケースでは、フックが開くことはない。大体、フックが開くのは口のコーナーの硬い所に掛かってしまう場合だ。
その後、二人でそれぞれもう一回ずつフッキングがあったのだけど、二人ともなかよくバラしてしまった。そうこうしているうちに対岸のトレールを二人のフィッシャーが下ってきた。あ、上流の二人が場所を変えるため移動してきたのだ。スティーブに声を掛けて、すぐに上のプールへ移動することに。そのプールに到着しトレールからプールを見ると対岸に黒い帯が見える。黒い帯はすべてサーモンで、コートニーが言っていたのはこのプールのことだ。サーモンが沢山溜まってるからすぐに分かると言っていた。二人のフィッシャーが移動したのはたぶんサーモンのバイトが長い時間オフになったからだろう。こういうケースではプールのフィッシャーが入れ替わり、全く違うフライを使うことでまたバイトがオンになることが多い。対岸の岩盤付近に沿ってサーモンがいるので、スティーブにはフライを対岸に届くようキャスティングを指示したのだけど、彼のキャスティングでは残念ながら岸まで5フィートほど手前までしか届かない。それでも投げた直後に上流に大きくメンディングしてフライ先行で素早く沈めて貰う。岸よりのサーモンにはフライは沈み切らないけど、流れの中央付近のサーモンには十分に届くはずだ。
コートニ−が教えてくれたプール。右側の岩盤にそってかなりの数のサーモンがステイしていた。ビーチ・ランディングのスペースが無いので左手の浅瀬に寄せてサーモンのテールを摑む。コンパクトに持ち運びのできるネットの必要性を感じた。
驚いたことに、ここでもスティーブは3回目のキャストでサーモンをフッキングしたのだった。小さなメスだったので、ほどなく無事ランディングできた。私にもすぐにアタリがあり、暫くやり取りをした後にオスのチャムを無事ランディング。ここは下のプールよりもサーモンの数が多いぶんだけ、フッキングのチャンスは増えそうだった。私は対岸ギリギリまでキャストするので、しょっちゅうフライが対岸の樹々に引っかかり3個ほどフライをロストした。島の小さな川ではこのように両側の樹々が迫っているケースが多く、フライのロストはある意味仕方がないと言える。結局、ここでは強い雨が降り出す午後3時頃まで釣り、スティーブは3匹、私も5匹ほど釣ることが出来た。お互いにバイトやフッキングはその倍以上あったはずだ。この増水時の厳しい条件の中でこれだけサーモンをフッキングできたのはほんとにラッキーだった。フライ・ショップに寄ってコートニーのアドバイスが無かったら、全く釣りにならなかったかも知れない。当たり前のことだけど、魚を釣るには魚がいる場所をまず知らないと話にならないのだ。それにしてもプロのガイドはほんとに大変だと思う。どんな条件下でも顧客に魚を釣って貰わないといけない。特に川が増水した時にどう対処するのか、どれだけ釣れるポイントを知っているのか、そこでガイドのプロとしての真価が問われる。
実はこの日の午後から強い雨が降り始め、その後の天気予報によるとかなり広範囲なストームが島全体にやってくることが分かった。幸い、次の日の朝は一時的に雨も止んでいたので、本格的なストームがくる前にスークに戻り釣りをすることにした。スークに戻り、午前中の10時頃から雨脚が強くなる午後1時くらいまで釣ったのだけど、この日、低気圧の接近のせいか、サーモンの喰いは渋く、スティーブも私も何とか1匹ずつランディングするにとどまった。結局、本当は残り2日間、スークで釣りをする予定だったのだけど、島には本格的なストームがやってきてスーク・リバーの水位も一気に上がり、釣りを続けることは難しくなったのだ。後半、天候に恵まれなかった私たちのサーモン・フィッシングの旅だったけど、それでもスティーブは今回の釣りでサーモンをトータルで7、8匹釣り上げることが出来たのでとても満足そうだった。
プールから上流を見る。覆い被さる樹々が川の両岸に続く。島ではこんな川が結構多い。オーバーハンドのキャスティングではバックスペースが取れないのでかなり難しい場所。短めのスペイかスイッチロッドで、アンカーポイントを手前に置きキャスティングするのが理想的。ラインも20ft前後の短めの方が扱い易い。私が島でスイッチロッドをメインに使ってるのはこんな理由だ。
ビクトリアに帰ってきて、とりあえずのお疲れさまで市内のパブでビールを乾杯。いろいろ話は盛り上がったのだけど、彼はどうやらダブルハンドの釣りに興味を持ったらしく、スイッチロッドを手に入れてキャスティングを練習し、是非、また島へ戻ってきたいと言っていた。川で他のフィッシャーを見たりして、自分がキャスティングを含めてかなり酷いフライ・フィッシャーである、ということをしっかりと自覚したらしい。で、スペイのフィッシャーはラインがシューと長い距離飛んで行くのがとてもカッコよろしいとのこと。スティーブさん、是非、精進して頑張ってください。そんなわけで、フライ初心者でも経験者が側にいて、川にある程度サーモンが居れば、案外にサーモンは釣れてしまうというのが今回のお題の結論になります。具体的にはシンクティップの選択とティペットの長さを含めてのフライの流し方、アタリが取れるフライの色味など、釣り場ごとに適切なアドバイスがやはり必要になるということ。ま、初心者は1人で出かけずに経験者と一緒にサーモンの川へ行きましょう、ということかな。