3秒ストーリー
2013.11.27 Wednesday
カウチン川は上流、中流域の山岳エリアを抜けてから
ダンカンというハイウェイ1号添いの小さな町中を蛇行したのちその流れを海に注ぐ。
ここから河口であるカウチンベイまでは車で10分ほどの距離。
このあたりは上流部のような高低差がないので流れはゆったりと深く川幅も広い。
ブラックブリッジはその昔、切り出した木材を運搬した貨物鉄道のための鉄橋だが
今は廃線になり使われてないのだけど、橋を撤去するにもコストがかかるためか
そのまま放置された状態になっている。あちこちの島の川で釣りをしていると
このような使われなくなった古い鉄橋をよく見かける。
このポイントは町の中にあって便利がいいためか、普段はルアーフィッシャーが多い。
フライフィッシャーは物理的な空間の使い方がルアーの釣りとは異なるために
釣り人が多いポイントでは何となく居心地が悪くなるのは確かだ。
普段は上流部にはフライ専用区もあるし、その他にもフライで釣れるポイントは多いので
ルアーフィッシャーの多いこの場所へやってくる必要もないのだけど
今現在、カウチン川で比較的コーホーサーモンが釣れてる場所は
このポイントという情報を得たのが、あえてこのポイントへ出向いてきた理由なのだった。
ウィークデーの早朝ということもあり、ポイントには1人にルアーフィッシャーがいるだけだった。
川の右岸は比較的バックスペースがありフライのキャスティングも問題なさそうだったが
問題は川の深さで、はっきりとはわからないけど最深部は軽く10フィート以上ありそうだ。
コーホーサーモンの釣りはボドムをトレースするというよりは中間層にフライを流すのが
効果的らしいのだけど、それでもシンクティップの選択は単純にはいかない。
その日の魚の活性状態で居着く層は違うし、流れの早さと強さとの関係もある。
とりあえずT−11の10フィートと普通サイズのよくあるサーモンフライでスタート。
シルバーのボディにコーホーカラーと言われるブルーのマラブーを巻いたシンプルなフライだ。
川はとても静かでジャンプするサーモンもいないし、どうも魚の気配を感じない。
まだ活性の低い時間帯なのかもしれないと淡々とキャスティングを繰り返していた。
そろそろフライを流す層を深くするためにシンクティップを変えてみようかなと
思っていたときに二人のルアーフィッシャーが対岸に現れた。
自分の場所から10メートルほどのところでドボン!とした大きな音がしたので何かと思ったら
対岸のルアーフィッシャー投げ込んだルアーの音だった。かなり大きなルアーだなと思った瞬間、
さらに大きなドボン!と水を割る音がした。突然、銀色のコーホーサーモンが目の前でジャンプ!
なんとキャステイング一発目でコーホーサーモンがヒットしたのだった。
1分ほどほどやり取りをしていたけど、フックが外れたらしく対岸からは大きな罵声が響いた。
それにしても驚いた。
あのルアーの大きさからシンクレートを考えるとやはりかなり深い層に魚はいたのだ。
それとあのルアーサイズに反応するということは出来るだけ大きなフライじゃなくてはダメだ。
シンクティップをT-14の12.5フィートに付け替えて、フライは手持ちの中で一番サイズの大きく
重いダンベル・アイを付けたブルー&ブラックのイントルーダーをティペットに結ぶ。
15分後、突然、コーホーサーモンとの出会いはやってきた。
フィッシュ・オン! ジャンプ! フック・オフ!
すべてはたった3秒で終わっていた。
コーホーは最初に大きくジャンプして首を振るから、
その瞬間ロッドを下げろって聞いていたのに、結局、何も出来なかった。
がっくりと肩を落として、視点の定まらないうつろな目で暫く呆然と川面を眺め続けた。
よくある話なのだけど、その後、サーモンの当たりはピタリと止まり
その日、もう一度、サーモンとの繋がりをロッドに感じることは無かったのだ。
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