サーモン、思い出のロッドを折る

2014.10.17 Friday

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    ここ2、3日の雨で水かさが多少増えたとはいえ、川底の玉砂利が綺麗に見えるほどまだ水の透明度は高い。膝下あたりまで川に入り、対岸近くのやや深めのプールを回遊しているチャム・サーモンの群れをグラス越しに確認する。はっきりとは個々の姿は見えないけど、群れ全体の影がときどき動いているので彼らの場所を確認できる。ここスーク・リバーでの釣りは完全にサイト・フィッシング。サーモンの群れがいる場所を探すことから釣りは始まる。


    先日、サンクス・ギビングの時に使ったチャートリュースとパープルのフライを結び、サーモンの群れの向こう側に出来るだけ静かに落とす。完全に鏡面で流れは無くほぼ止水の釣りだ。ゆっくりと3秒ほどカウントしてから、スローリトリーブを開始する。たぶん彼らのいる場所は腰ぐらいの深さだと思う。ほんの少しだけ沈むシンクティップを使い素早くフライを水に馴染ませている。群れのちょうど中心あたりをフライが通過する頃、ズンという鈍い当たりに軽くロッドを合わせると、首を左右に振りながらボディをくねらせているサーモンの白い腹が群れの黒いシャドーの中でゆっくりと浮かび上がる。最初の首振りでダメだと分かると一気に走り出すので心の準備が必要だ。





    今日もこのフライは使えそうだ。あれ、何個くらい巻いてきたっけ?幸先よくサーモンが掛かったので、もうフライの在庫の心配をしている。といっても同じフライばかり使っていては見切られるので、チャートリュースとパープルの組み合わせを中心にサイズ違い、パターン違いのフライをローテーションさせていく。時々、まったく異なる色味のフライをローテーションに加えるとそれが食い気を誘う場合もある。サーモンのフライはソルト用のパターンを参考に、出来るだけシンプルに巻いてる。サイズも比較的小さめで、その方がサーモンの群れを通過させる際に驚かせないと思う。島の川は大きく二つのタイプに分けられ、ひとつはこのスークやビックQ、リトルQのような比較的小さめで透明度が高く、流れが緩いタイプ。この手の川では小さめでシンプルなフライがよく働くし、カウチンやスタンプ、キャンベル、ゴールドなどの河川は流れも強く、川幅もあるのでやや大きめでバルキーなフライでサーモンの目を引くというのが、とりあえずの基本ストラテジー。


    この日サーモンの喰いはオン、オフはあるにせよ、比較的、活性が高くコンスタントにロッドは弧を描いていた。木曜日の朝なので、このプールにはあと2人ほどフィッシャーがいたけど、それぞれの釣り場スペースは十分に確保されている。前回の混み具合とはえらい違いだ。朝、7時過ぎから釣り始めて、気がつくと10時くらいになっていた。ティペット切れやフックが外れたりしながら、それでも10匹ほどはサーモンをランドしていたかもしれない。






    話はその後のこと。あるフッキングさせたサーモンをそろそろ岸に寄せようかなとロッドをちょっと煽ったところ、いきなり「バキッ」という大きな音。あれ、何の音。一瞬、何が起こったのか、全く理解出来なかった。その後、ロッドが根元から折れてる様を見て驚愕。とりあえず、サーモンを取り込む必要があるので、ロッドを放り投げラインを摑む。結局、ラインを手でたぐって少しづつサーモンを岸に寄せたのだ。海で小さな船に乗りラインだけで釣りをする漁師の姿が目に浮かび、急に笑いが込み上げてきた。もう、笑うしかないと、ガハハハハー。まわりのフィッシャーが何事かと、こちらを振り返る。



    このロッドは17、8年前のSage SP #8。最初にカナダに来てフライフィッシングを始めた時に、無謀にもアトランティック・サーモンを釣ろうと購入したもの。実際にその年、ケベック州のカスカペディア・リバーへ出かけてこのロッドを使い、何とビギナーズラックで大きなサーモンを釣ったのである。そんなわけで、それ以降、ティップを2回も折りながらも、その都度Sageに修理に出しては使い続けた何と言うか、腐れ縁のロッド。NY州北部のサーモン・リバーで初めてスティールヘッドを釣ったのも、このロッドだった。経年劣化もあるだろうし、かなり長年に渡り酷使したのは確か。特にこの島に来てスペイロッドを使わない川では、かなり大きなサーモンを何度も掛けている。ボトムのハンドルもショップに依頼して付けて貰ったし。ロッドも折れたけど、何となく心も折れてしまった。





    来週から10日ほど日本へ帰るので釣りとブログは暫くお休み。戻ったらキャンベル・リバーへまた行くつもり。




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