キャンベル・リバーでシーズン開幕
2015.08.29 Saturday
時折、水面を割って軽くジャンプする個体があちこちに現れているので、川にいるピンク・サーモンは満遍なく広がり、かなりの数になるはずだ。フライゾーンの一番上流にあるこのプールの深さはたぶん5、6フィートだと思うのだけど、ポーラレンズのグラス越しにサーモンのスクールの影は見つけられなかった。ただ、時々、ローリングする個体の横腹が銀色に反射するので、スクールしている大まかなポイントの見当はついた。このプールに立って約20分。すでに2匹がスレ掛かりしているので、サーモンのいる深さにフライが流れているのは間違いない。
ちゃんと口に掛かってくれないのは、たぶんフライの選択が間違ってるのだ。ピンクサーモンのフライはピンク色というのが、もう間違いない鉄板ルールである。しかし一概にピンク色といっても、その大きさや素材の違い、フライの形など無限にあるので、正しいアタリのフライを探すのは結構、大変なのだ。大体、ピンクという色だけで、派手な濃いめのレッドに近いものから薄めのイエローがかったものまで幅があるわけだし。上手に立っている年配のフィッシャーはコンスタントにロッドを曲げていたので、彼はこの日のアタリのフライをすでに見つけたのだろう。周りの数人のフィシャーは私と同じように首を傾げながら、空しいキャストを繰り返していた。
ピンクサーモンに限らず、サーモンの釣りで目の前に魚が沢山いるのにヒットしない理由はいくつかあると思う。ひとつ目はサーモンのいる層にフライが正しいスピードで流れているかどうか。コーホーサーモンを除き、他のサーモンは鼻先を通過するフライだけを捕食する。しかも群れているグループの中でフライにちょっかいを出すのは5%から10%だと言われており、一日の釣りでサーモンがコンサタントに釣れ続ける状況というのは、数百匹の個体に対して目の前に正しくフライを流す必要があるらしい。二つ目はフライのセレクション。これは説明の必要はないだろう。三つ目はサーモンがバイトするムードではない時。これは丸一日、口を全く使わないとうよりは、スイッチのオン,オフのように時間帯によって切り替わるケースが多いようだ。上手のフィッシャーがヒットを続けているわけだから、もちろん今サーモンはバイト・モードである。ということはここはやはりフライの選択ミスということだ。
ここでこの日のために用意したフライを結ぶ。先月、たまたまネットでみつけた某フィッシャーのピンクサーモン攻略のブログ記事。記事の内容もとてもためになったのだけど、彼は自分のピンクサーモン専用のフライボックスの写真を惜しげもなくアップしてくれていた。そのフライボックスにぎっしりと詰まったフライたちは様々なアイデアを私に与えてくれて、その中から近いパターンを2、3種類巻いてきたのだ。チャートリュースのビードヘッドに、ピンクのレーザーラップ、長い光モノのテールといった極めてスリムでシンプルな形のフライ。レーザーラップの細身のフライは昨年チャムサーモンの釣りでも凄い威力を発揮した。チャムの場合、カラーは明るいグリーン。
これが一発目から効いた。ピンクサーモンのアタリは非常に繊細で分かり難くて、大抵はスィングの後半にいつの間にか掛かっていたというケースがとても多い。サーモンの中では一番分かり難くて、たぶん柔らかい口を持っていてバレやすいという特徴と関係があるのかも知れない。一旦フックしたピンクサーモンは、まだ海から上って間もないフレッシュな個体が多いので、相当な強さで走る。サイズは同じ位でも川育ちのレインボーやブラウンとはトルクが全く異なるのだ。ピンクサーモンはサーモンの仲間の中では小型で50センチ前後がアベレージサイズだろうか。暫くやり取りして釣り上げたオスのピンクサーモンはまだ婚姻色は現れていなくて、海から上がってきたばかりで銀色に輝いていた。これから時間が立つと口が曲がり、背中が大きく三角型にせり出してくるはずだ。ピンクサーモンがハンピィのニックネームで呼ばれる所以だ。
小型サーモンとのやり取りを楽しむためにと12フィート5#の低番手のスペイを持ってきたのだけど、通常のサーモン用のロッドでも決してオーバースペックではないし、スレで掛かかった場合、強引に手元に寄せて時間を無駄にしないためにもその方が良いかもしれない。ラインは420gスカジット20フィート、シンクティップは12Tを10フィートに5フィートの12ポンドのモノフィラ。太めのティペットを使うのは、太さを気にしないサーモンの釣りでは太い方がティペット交換の手間が省けるし、まだ数は少ないけどキングサーモンがプールに入っている可能性もあるからだ。
その後、1、2匹釣るとフライを見切り、アタリが止まるのでフライのローテを繰り返すというパターンで時間は過ぎていく。フライの見切りとサーモンのバイトのオン、オフのスィッチがあるので、常に釣れ続けるわけではない。それでも心地良い間合いでサーモンはロッドを曲げてくれた。ふと横を見ると2匹の鹿がフィッシャーのすぐ後ろに現れて、水を飲んでいた。穏やかな夏の終わりの光を浴びて、気持ちを和ませる至福の時間はゆったりと過ぎていった。
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