駆け上ったキング、無口なコーホー

2015.09.30 Wednesday

0
     

    夜明け前、カウチン・バレーの手前のハイウェイを北上していると、ヒマラヤ杉の森の上にいきなり明るい大きな月がポッカリと浮かんでいた。まるで貼付けたように大きなスーパームーン。満月の時の魚の活性は、良いという人と悪いという人がいる。自分の場合は今まであんまりいい思いをしたことがないなぁ。ネガティブな予感を頭から追い出してハンドルを握る。取りあえずLQリバーに到着して川を見ると、水位は通常並みでニゴリもない。ただいつもサーモンのスクールが見える橋の下のプールにはサーモンの姿は一匹も見えない。不安がよぎる。





    橋の下から川を上っていくと最初のプールで、顔見知りのフィッシャーに出会う。この川をよく知ってるフィッシャーで、早速、キングサーモンのことを聞くと、先日の雨の増水でほぼ上流に向かってしまっているとか。ハッチェリーの手前のプールに溜まったキングサーモンを柵をオープンして上流に向かわせたらしい。先週、Sくんが言っていたことが現実となっていた。通常、緩いペースで各プールを上るサーモンも一旦ある程度の雨が降ると、一気に上流を目指す。で、数は多くないけどコーホーサーモン(シルバーサーモン、銀鮭)が入ってきていて、いくつかのプールにステイしているとか。それと2日ほど前にはチャムサーモンの群れも見かけたらしい。どうやら今年は遡上のサイクルが各サーモンとも早めなようで、この川ではキングサーモンの釣りは出来なくなったということか。やはり先週の雨の前がキングサーモンの釣りのピークだったのだ。


    コーホーはどうかと聞くと、朝一番で一匹釣った後はアクションはないとのこと。比較的、緩い流れのやや浅い場所に定位しているけど、水の透明度が高いからフライはうまく流さないとスプークさせやすいと言っていた。サーモンの釣り方としては、もっとも難易度が高い。彼は親切にもコーホーがステイしているプールを教えてくれたので、とりあえずそのプールへ向かう。コーホーの遡上時期は比較的長くて、9月のキングの時期から11月一杯ぐらいまで川にいるのだけど、大きな群れがまとまって遡上するというよりは小さなグループが散発的にプールに溜まるようだ。もちろん川によって状況は違う。例えばまだ行ったことはないのだけど、ポート・レンフルーのサンワン・リバーは大きなサイズのコーホーが10月になると固まって遡上すると聞いた。





    浅く緩いプールに確かに5、6匹の影がユラユラと見えた。小型のコーホーだ。こちらでは小型のコーホーをジャックと呼ぶ。島、中部の川のコーホーはサイズ的にはピンクよりもやや大きく、チャムやキングよりは小さいものが多いような気がする。サンワン・リバーのコーホーは30ポンドを超えるものが多いらしく、それだとキング並のサイズだ。ティップをフローティングにしてリーダーも少し長めに、フライは赤かピンクが良いらしいので、ピンクの小さめのクルーザーを結ぶ。ジャンプするサーモンは一匹もいない。どうも活性が低いみたいだ。キャストを繰り返し、フライをチェンジするも、反応はなし。1時間ほどして場を少し休ませるために、上流へ向かう。いつもならある程度の数が見込める各プールとも、サーモンの姿は見えない。その後、再びジャックのいるプールへ戻り、最初のキャストでバイトがあったのだけど、首を振られて3秒ほどでフックアウト。さらに1時間ほど粘ったけど、その後サーモンは沈黙をキープ。白旗を上げて場所を移動することに。川を下る途中で2カ所ほど、コーホーがステイするポイントを見つけフライを流すも、バイトのスィッチはオフのままだった。


    BQリバーへの移動も考えたけど、このまま上流のハッチェリーの手前のプールをチェックすることにする。上流へ向かったキングのグループのしんがりが上流のプールに残っているかもしれない。上流を目指し未舗装の山道をゆっくり走っていると、ちょっどハッチェリーの門の手前で二つの黒い物体が横切っていた。何とブラックベア。車を見ると一目散で反対側の森へ消えた。親子というよりも、若い熊の兄弟か。熊に注意の看板があるので、いるのは分かっていたけど、実際に見るとやはりあまりいい気分ではない。まあ、川で出くわすよりも良いのだけど。ブラックベアはグリズリーと違い、比較的人間を怖がるようで、ノイズを立ててこちらの存在を知らせてあげるのが大切だ。私は熊スプレーも鈴も持っていないけど、川へ入るときはガサガサと樹々の音をたてて鼻歌を歌うことにしている。親子づれと出会い頭に遭遇しなければ大丈夫というのが周りの話だけど、島に3年住んでブラックベアに襲われたというニュースは聞かないのでたぶん大丈夫なのだろう。それよりもクーガーに襲われたというニュースを時々聞くので、島ではクーガーの方が恐い。





    ハッチェリー下のプールは低い渓谷になっていて、両側の樹々が覆い被さっている。流れは緩めで透明度はかなり高い。目視できるサーモンの姿は見当たらないが、とりあえず深い場所を中心に吊り下がる。チャムの最盛期にはぎっしりと黒い影で覆われるプールも今は空っぽの状態。しばらく下ると1人のフィッシャーに出会う。釣りの状況を聞くと今釣ってる場所でコーホーがステイしているので狙っているけどアタリはなく、キングサーモンはこのエリアにはもういないという話だった。そのまま暫く釣り下って、小さなプールでコーホーの影を見つけた。かなり長い間、フライを変えてトライしたのだけど結局アタリは取れなかった。この日はサーモンのバイトのスイッチはとうとう入らなかった。2週連続でスカンクを喰らったのだけど、サーモンの釣りではタイミングをはずすとよくあることだ。来週からどこの川で釣るか、迷う。そろそろスーク・リバーにチャムとコーホーが上る時期なのだけど、キングを狙うとすればキャンベル・リバーへ出かけるのも手かな。とりあえず情報を集めないと。

    にほんブログ村 釣りブログ フライフィッシングへ



    にほんブログ村