センターピンって何ですか?

2015.12.07 Monday

0
     

    例年、11月の終わりから2月頃まで島は雨期のせいで、どこの河川も増水ぎみ。冬のターゲットであるスティールヘッドは川に入ってきてはいるのだけど、フライフィッシャーには釣り難い状況が続く。自分はカウチンリバーの水位をネットで調べ1.5mを一応の目安にしていて、それを切れば釣りに出かけることにしているが、最近は2mを超える水位をキープしていて釣りはちょっと厳しい状況。そうこうしているうちに春になってしまうのがここ最近のパターン。


    そんな中、フロート・フィッシングのフィッシャーは水位など関係なく、川に出かけているみたいだ。要するに重りを使った浮き釣りで、スピニングのリールにデカいフロート(浮き)を付け、ヘビーな重りでエッグパターンなどのルアーをナチュラルにドリフトさせる。この釣りのシステムは好き嫌いは別にして、冬のスティールヘッドには最も効果的だ。太く強い流れの底付近にいる冬のスティールヘッドは活性が低く、目の前に流れるものにしか反応を示さない。大きな重りで一気にターゲットの層に疑似餌を送り込めるこのリグは理にかなっていて、フライフィッシャーでさえもヘビーな重りと大きなインディケーターを使いニンフやエッグパターンのフライで釣りをする。これはフライの道具を使っているけど、要するにフロート・フィッシングと同じだ。フライラインの流れの抵抗やキャスティングのやり難さを考えれば、素直にスピニングで釣った方がラクチンだと思うのだけど。



    センターピン・リール。薬指と小指でスプールをコントロールする。



    近年のダブルハンドの釣りブームの影響で、北米のスティールヘッドの釣りはスカジットラインにイントルーダーを使うイメージが浸透し、あたかもそれが釣りのメインのスタイルだと思い込んでいる日本のフライフィッシャーは多いと思う。ところが五大湖周辺の河川や北西部でのスティールヘッドの釣りでは圧倒的にフロート・フィッシャーが多い。スカジットラインを使いスィングさせる釣りで、冬のスティールを狙う人は全体の釣り人の割合からすれば少数派だ。スキーナやトンプソンのような大きな河では、ダブルハンドでのスカジットの釣りは問題なくその利点を活用できるけど、北西部のほとんどの川は幅が狭く流れが早いのでフライをスィングさせスティールヘッドがいる底に的確にフライを送り込むのはかなり技術的に難しくなる。もちろん技術的なハードルが高い状況で、あえてフライで釣るということに意義を見いだす人もいると思う。私はここ3年ほど島での冬のスティールヘッドの釣りを見て感じたことは、ダブルハンドでフライをスィングさせる釣りは条件が揃わないと難しいということだ。元々、バスのルアー釣りからフライの世界に入った自分はフライ至上主義者ではないし、魚を釣るためのシステムという観点からどんな方法が合理的で効果があるのか、いつも考えていた。冬のスティールヘッドの釣りに関する限り、フロート・フィッシングが最強だと思う。



    ロッドとリールのコーディネートがかっこよろしい。カスタム・ロッドかもしれない。


    そんな私が最近、気になってしょうがないのがセンターピン・リール(Centerpin reel)をつかったフロート・フィッシングだ。リグのシステム自体は、重りを使った浮き釣りなのだけど、肝の部分はリール。このリールは一見フライのラージアーバー・タイプなのだけど、ドラグ機能が付いていない。キャスティングも魚とのファイトも、ラインはロッドを握った指ですべてコントロールする。ロッドを立ててリールから指を離すと、重りの付いたラインは足下に山のようなパイルを作ってしまう。精度の高いベアリングを装備しているリールはラインの送り出しがとてもスムースで、モノフィラのラインは流れに合わせて自然にどこまでも流すことが出来る。20、30メートルのナチュラル・ドリフトも可能とのこと。11フィートから13フィートの長いロッドを使用するので、キャスティングもサイドからフリッピングするだけでそこそこ距離が出せる。考えれば考えるほど、このシステムは冬場のスティールヘッドの釣りに最適だと思えるのだ。魚を掛けた後のやり取りも、ギヤ比1:1のドラグのないリールで指先だけのコントロールで対処する。サイズの大きい冬のスティールヘッドを相手に、このリールでのやり取りはかなりのチャレンジだと思う。


    元々イギリスでフライリールが生まれた頃には、このセンターピンのリールも制作され主に鯉の釣りに使われていたらしい。それでイギリスからの移民が多いカナダに持ち込まれ、近年スティールヘッドの釣りに使われるようになったとのこと。北米の北西部ではここ5、6年でかなり普及し、カウチンリバーでもチラホラと見かけるようになった。ここ数年のセンターピン・フィッシャーの増加に、各メーカーは素早く対応している。元々、ルーミスはセンターピン用のロッドを以前から作っているし、リール会社のロスもセンターピンのモデルを投入した。またSAGEは製品こそまだ出していないが、専用のロッド・ブランクを販売している。あのTFOもセンターピンのロッドを出したらしい。これらセンターピンのロッドとリールはフライショップの一角で販売されていることが多く、フライ・フィッシャーからの取り込みをかなり意識してる。



    型の良いワイルド・スティーリー。冬の醍醐味。


    このセンターピンの釣りは、スピニングのフロート・フィッシングから入る人とフライから入ってくる人に分かれる。釣り方は浮き釣りだけど魚とのやり取りはフライ的なので、両者の中間に位置しているからだ。フライの人でインディケーターの釣りをする人は釣りの理屈は全く同じなので比較的抵抗なく入ってこれると思う。面白いことにスピニング系の人はもろにエッグ系イミテーションやジグヘッドを使うのに対して、フライ系の人は通常のフライの釣りで使うニンフやストリーマーを使う。このあたりはそれぞれの立場のこだわりが感じられて面白い。自分の場合、春先のトラウトから夏のピンクサーモン、秋の本格的なサーモンシーズンまで、ダブルハンドでフライをスィングさせる釣りがメインになるので、センターピンで冬のスティールを狙う期間は短い。この全くやったいことのない釣りの道具に一体どれだけ投資するべきなのか、迷ってしまうところもある。好きになれないかもしれないし。比較的リーズナブルな入門用のロッドとリールを手に入れて、とりあえずはどんな感じなのか、川で試してみようかと思っている。


    最後にセンターピンでスティールヘッドを釣ってるビデオを紹介する。ワシントン州のオリンピック・ペニンシュラ周辺の川。このあたりはスティールヘッドの遡上で有名なエリア。スカジットキャストで有名なホーやスカジットリバーがある。


    https://www.youtube.com/watch?v=xLIcOCS5JCE&feature=youtu.be


    もう一本、センターピンの釣り方をダイジェストに紹介したものを。これを見ると、キャスティングの雰囲気やリグの様子が理解できる。


    https://www.youtube.com/watch?v=Rqyoa175v2Q




    にほんブログ村 釣りブログ フライフィッシングへ



    にほんブログ村



    1