多目的リーダー・システム
2016.06.06 Monday
この日、午後から家を出た私はカウチン上流のフライゾーンへ向かう前に、下流にある町ダンカンに立ちよった。ダンカンの中心地にあるスポーツショップに勤めるBさんに会うためだ。ある人からBさんを紹介して貰ったのだけど、彼は島中心部のサーモンの釣り全般に詳しいらしい。とても気さくな人で私が日本人だと知ると、親切にいろいろ教えてくれた。私が知りたかったのはダンカンの南の海岸でピンクサーモンとコーホーサーモンが差し込んでくるというポイントだ。彼の話ではピンクは8月から、コーホーは10月から狙えるとのこと。今年は偶数年でピンクサーモンの当たり年になるはずなので期待できるらしい。アクセスするポイントをグーグルマップを見ながらしっかりと教えて貰った。私はピンクの釣りはここ2年、キャンベル・リバーへ通っていたのだけど、このビーチはヴィクトリアから1時間未満で来れるので3時間掛かるキャンベルよりも気軽に来れる。それでも川でのピンクの釣りは50センチオーバーの大型トラウトをひっきりなしに釣ってるような楽しさがあるので、たぶん今年も何回かはキャンベルには行くと思う。その他、オイスター・リバー、ナイル・クリークの河口域のアクセス・ポイントも教えて貰ったので、是非、今年は行ってみたい。丁寧に感謝の言葉を述べて握手して店を出た。
その後カウチン上流部へ。Spring Poolからブリッジまで2キロほどをダウンクロスのウェットフライで釣り下り、トレールを歩いて戻りSpring Poolでのイブニング・ハッチを釣るというプラン。先週に較べ川はまた水位が減っていた。多くの場所では川底の石が見えている状態。時間的にも日の高い午後だし、果たしてこれで釣りになるのか。かなり厳しいと思うけど、天気もいいし新緑の川の景色をのんびりと楽しめばいいのだ。
ここでフライゾーンのレギュレーションについてちょっと書いておきたい。もちろんC&Rなのは言うまでも無いのだけど、インディケーター、スプリットショットの使用も禁止。フライを沈めたい場合は、フライそのものにウェイトを入れて重くするしかない。その他、バーブレスのシングル・フックのみ使用で、2個、3個とウェットフライを付けるのは許されない。このレギュレーションに従うと、ニンフの釣りはタイトラインのアウトリガー、通常のドライフライ、それとウェットはシングル・フックという釣り方に限定されることになる。実はこの三つの釣り方に対してリーダー・システムを変えずにポイントによって対応できるマルチプル・リーダー・システムがある。先日、たまたまRIOのサイトを見ていたら紹介されていたのだ。通常のクリアなテーパード・リーダーの細い方をカットし、ツートーンカラーのティペットを2フィートはさみ、その後、ノーマルのティペットを結ぶというもの。接続にティペット・リングという極小のリングを使う。
その極小のリングなのだけど、もの凄く小さくてフックのアイほどの直径。ツートンのティペットとノーマルのティペットの間に使うと、ノーマルのティペットが短くなってきても結び目がないので、ツートンの方は短くならないというわけ。リーダーの本体部分に付ければ、結び直しでリーダーが短くなることもない。私は2つのリングでツートンのティペットをサンドイッチにする形で使用したのだけど、使い心地はとても良い。
このシステム、要はツートーンカラーのティペットがインディケーターの役割を果たすのだ。これでアップクロスのニンフの釣りでは、この目印のティペットでアタリを確認し、ダウンクロスのフライをスィングさせる釣りやドライフライではこの目印は無視して、通常のティペットの一部として機能させる。サイトでは接続に極小のリングを使用し、ニンフィング以外の時はツートーン部分を取ってしまうとあるが、この日、私は付けたままでウェットフライをスィングさせたりドライフライを使ったりしていた。釣りそのものは川の状況が悪くかなりシビアだったのだけど、この釣り方で2匹ほど魚が釣れたところをみると、魚はツートーン部分は気にしないように思われた。ノーマル・ティペットの長さをある程度取れば、魚の視界には入らないのだろう。そもそも色が付いていると言っても、フライラインよりも遥かに細いティペットなのだし。ニンフも少しやってみたけど、目印としての視認性はとてもよかった。このシステムのお陰で、深いポイントではアップクロスにフライを沈め、チャラ瀬ではダウン・クロスにスィングという釣りが簡単に出来るようになった。このツートーンカラーのティペットはRIOをはじめ数社から販売されている。ここ数年のチェコスタイルのニンフィング・テクニックが一般のフィッシャーにかなり普及してきたせいだ。ティペットだけではなくて、そのスタイルに合った専用の長いロッドも各社から出ている。チェコスタイルのニンフィングは3個以上のフライを使うので、カウチンではそのスタイルで釣ることはできないけど、通常のタイトラインのニンフィングでもツートーンカラーのティペットはかなり有効だ。
ブリッジまで釣りくだり釣果は2匹だけ。もう少し出てくれるかと思ったのだけど、渇水時での午後の時間の釣りということでこんなものか。その後Spring Poolに戻り、ライズ待ち。カナダ・ギースのカップルがプールにやってきて、水草をついばんでいる。人を怖がる様子は全くなくて、自分との距離はほんの数メートル。ライズが始まったら、ちょっと、どいてくださいね。暫くして散発的に始まったカディスのライズにフライを流し続けるも、無視され続ける。ドライフライはまったくダメでイマージャータイプのフライで何とか2匹、喰ってくれた。サイズは約30センチ前後か。プールの下の方で時々、ボコ、ボコ、という大きなライズがあったのだけど、あれはサイズがちょっと大きそうだ。#12のシルバーボディのソフトハックルをダウンクロスへ。そろそろアイツの鼻先かなと思った頃、ズンという重いアタリであの魚だとすぐに分かった。暫くやり取りして慎重に寄せ無事ネット・イン。45センチほどのレインボー。それにしても#4のシングルハンドでこのサイズを相手にするのは面白い。細めの敏感なティップから伝わる魚のダイレクトな反応は非常にエキサイティング。ダブルハンドの釣りでは得られない感覚だ。その後、プールのライズは収まり始めていた。暗くなる前にもう一回、ライズの波が来るのは分かっていたけど、この日は妙に疲労感を感じたし最後の一匹に満足したので、これで上がることにした。まだ森のトレールは歩き進めるだけの明るさを保っており、懐中電灯を点灯させる必要はなかった。
日暮れ前の森の帰り道で、今後の釣りについて思いを巡らせていた。カウチンのトラウトは当初6月一杯は釣りになると踏んでいたのだけど、イヴィニングのSpring Pool以外は減水のためかなり厳しい。ひとつのプールに夕方だけ釣りに来るのも近くに住んでいればいいけど、ヴィクトリアから車で1時間半掛けてやってくるのもなぁ。7月中旬のピンクサーモンまで釣りは暫くは休みとするのが賢明かな。家でピンクサーモンのフライでも大人しく卷いていよう。などと疲れた頭で漠然と考えていたのだった。
にほんブログ村