フライ・フィッシング・ペインター 

2016.11.01 Tuesday

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    ダイアン・ミシュランはフライ・フィッシャーでペインター。

    両方好きだから、絵のテーマをフライ・フィッシングにしたとのこと。

    ダイアンは美しい釣り場の景色を切り取るだけではなくて

    フィッシャーの心情、喜怒哀楽を絵の中に盛り込みたいと言う。

     

     

     

     

    ダイアン・ミシュランというカナダ人の水彩画ペインターについては、実はよく知らなかった。ただ偶然、彼女のサイトを見つけてその作品を好きになり、時々こっそりと見せて貰っていたのだった。その彼女が、私が釣りでよく通うクィルカム・ビーチの側に住んでることが分かった。そこで思い切って彼女のサイトにある連絡先に、一度スタジオで作品を見せて貰えませんか、とメールしてみたのだ。すぐに彼女からOKの返事を貰い、スタジオ訪問の日時を調整した。ちょうど今の時期、川の増水でどこも釣りにならない状況なので、こちらも時間には余裕がある。今現在、バンクーバー島は完全に雨期に突入し、雨の日がとても多いのだ。残念ながら、このまま水位が下がらずにコーホーもスティールヘッドも狙えないまま年を越す可能性が高い。

     

     

     

     

    訪れた彼女の家は樹々が生い茂った閑静なストリートにあり、リタイアしたご主人のデニーと二人で暮らしている。ご主人はもちろん、筋金入りのフライ・フィッシャーだ。彼女は非常に気さくなフレンチ・カナディアンで、モントリオール出身とのこと。私もモントリオールに長く住んでいたので、すぐに共通の話題が見つかり簡単に打ち解けることができた。彼女の英語はもちろん完璧なのだけど、フレンチ・カナディアンが話す時のイントネーションの癖があった。フレンチ・カナディアンでも完璧にアングロフォンと同じ発音が出来る人もいるし、彼女のようにフレンチのアクセントを英語に持ち込む人もいる。

     

     

     

     

    早速、彼女の絵のことについていろいろ聞いてみた。

    彼女がフライ・フィッシングを始めたのは20年ほど前で、絵の方はそれよりももっと若い頃から油彩、パステル、アクリルなどさまざまな素材を使い、描いていたとのこと。ご主人の影響でフライ・フィッシングを始め、すぐにそれをテーマにしようと描きだしたのだけど、水彩画が一番合うことに気がついた。たぶん釣り場の風景には水があり、その透明感が水彩にマッチしているのではないか、とのこと。確かに油彩やアクリルではなかなか川の透明感は表現し難いのかも知れない。彼女は釣り場で出来るだけ、沢山写真を撮り、それをレファレンス、つまり素材にして構成を考える。写真をそのまま水彩画として写しとるのではなくて、いくつかの素材を入れたり削ったり、色彩のプランも写真のものにはあまりこだわらないとか。

     

     

     

     

    質問を続ける。

    「ところであなたの絵を見てると釣り場の景色の素晴らしさを描写している一方で、フィッシャーの心情が表現されているものが多いと思ったのですが.. 例えばがっくりと肩を落とすフィッシャーやカップルが笑顔で釣ってる絵とか」

    「私は釣り場の素晴らしさも描きたいけど、それと同時にフィッシャーの気持ちもそれに盛り込みたいの。私もフィッシャーだから分かるけど、フィッシャーはいつも川でニコニコ笑ってるわけではなくて、魚が釣れずに落胆したりしてることも結構多いでしょ。川の風景に四季があるように、フィッシャーにも喜怒哀楽がちゃんとあるのよね。そんな部分もうまく描けたらと思ってるのよ」

     

     

     

     

    フライ・フィッシングについて聞いてみた。

    20年前にBC州へご主人と旅行に来た際に初めてロッドを振り、すぐに取り憑かれてしまったとか。その後カナダ各地でトラウトやサーモンを釣り、今は主に夏の間だけBC州本土のスキーナ・リバーの支流でスティールヘッドを釣っているらしい。Bowlerという50年代風の小さなトレーラーを川の側に止めて一月以上もキャンプ生活をするそうだ。釣りそのものは朝夕3時間ほどで、後は川辺で絵を書いたり本を読んだりの毎日。スキーナ水系のスティールヘッドは放流魚は居らずネイティブだけなので、そのファイト、魚体ともほんとに素晴らしいとか。ただ、やはり年々その遡上する数は減少しているようで、そのことをとても心配していた。彼女が言うには、スティールヘッドは死んでしまう直前まで全力でファイトする。20分掛けてランディングし、おまけにほとんどの釣り人が行う記念撮影に時間を使うと、川に戻っても暫くすると死んでしまう魚が結構あるらしい。彼女は小さなフライと軽いティペットを使い、フッキングしても10分ほどファイトしたら、自らティペットを切ってリリースしてしまうと言う。せっかく掛けたスティールをランディングしなくてもいいんですかと聞くと、私は10分もスティールヘッドと遊んだらもう十分よ、とのこと。余裕があるというか、何とも魚に優しい優雅な釣りなのだ。最近、スティールヘッダーに浸透してきたランディングの際、絶対に魚を水から出さないというポリシーは、野生の個体の減少という背景があったのだ。

     

     

     

     

    最近、スティールヘッドの釣りで流行のダブルハンドはやらないのですか、と聞いてみた。

    スペイを練習しようとしたこともあったらしいけど、彼女が通う川は川幅もないし、ダブルハンドの必要をさして感じなかったとか。それと水面をバシャバシャと荒らすそのスタイルにも抵抗があったらしい。サマー・スティールの釣りは水位も低いし透明度も上がり、魚は表層に敏感になるので静かなプレゼンテーションが大切だし、魚は案外に近くにいるからシングルハンドで十分とのこと。フライも流行のイントルーダーなどよりも、クラシックな小さなパターンを使うことが多いらしく、釣り方もシンクティップは使わずに表層からやや沈めるくらいでアトランテック・サーモンの釣りに近いらしい。そんなわけで、シンクティップで底を取る冬場のスティールヘッドの釣りは全く興味がないとのこと。なるほど。自分たちが好きな釣りを、好きな時期に、好きな場所でやる、という何とも当たり前なことをやってるだけなのだ。

     

     

     

     

    結局、絵や釣りの話を何と2時間以上も延々と話し込んでしまった。あまり長居も失礼なので、引き上げることに。この日は生憎、フィッシャーのご主人は外出してお会いできなかった。だけど11月にビクトリアのフライ・ショップRobinson'sで展覧会をするとかで、そのパーティにはご主人も来るとのこと。パーティには必ず出席することを約束した。ご主人には、是非、オールド・スタイルのスティールヘッド・フィッシングの話を伺いたいと思う。ところでダイアンの作品はオリジナルと限定複製のジクレー・プリント(限定枚数は50枚がマックス)があり、ジクレー・プリントは一枚100ドル前後と買い易い値段になっている。日本の発送も問題ないとのことで、欲しい方はメールで発注可能。もし、分からないことがあるれば、私宛に連絡を。

     

    Diane Michelin

     

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