サーモン・フィッシング・キャンプ 2017 その3

2017.08.29 Tuesday

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    ローセクションから河口へ向かう。川幅が広くなり流れも緩い。

     

     

    3日目、4日目、5日目とも、前回書いたようなパターンで、「ログ・パイル」、「開きのプール」、「倒木のプール」、それともうひとつ上の「ビッグ・プール」を釣り回るというパターンだった。各プールには十分にサーモンがストックされていたし、サムと共に釣り方に関して試してみたいことにもトライし、夜の食事時に酒を呑みながら、いろいろと話も出来た。その時の話題になったのが、ひとつに川に3種類いるサーモンの釣り分けの可能性についてだ。今回、イヴ・リバーではピンク、コーホー、キングの各サーモンが混在していたわけだけど、実はコーホーだけがその性格が違うのだ。パシフィック・サーモンの仲間でコーホー(シルバーサーモン)だけが、積極的にフライを追う種類で、その性格はアトランテック・サーモンに似てると言われる。当然、釣り方も変わってくる。コーホーに関してはスローリトリーブは効かず、早めのリトリーブ、特に縦の動きを加えたものが効果があると言われる。具体的には、ヘッドの重いフライを使い、ロッドを細かくジャークしながら、素早くリトリーブする方法だ。ただし、他のピンク、チャム、キングの各サーモンに関しては目の前にスローリトリーブが鉄則。つまりコーホーを狙う場合は、他のサーモンは釣りづらくなるわけだ。逆に他のサーモンを狙う釣り方では、コーホーは釣れない。

     

     

    背が盛り上がってきたピンクのオス。#5スイッチでのやりとりはスリリングだ。

     

     

    このあたりは割り切りが必要で、コーホー狙いにするなら他の種類は諦める覚悟が必要になる。もちろん川によっては、コーホーの群れだけが入ってる場合もあるので、その際はコーホーの釣り方に集中できる。サムは川にコーホーが居る場合は、コーホー優先の釣りをするという。釣り人たちの間にも、サーモンの中ではコーホーに一番希少価値を見いだす人が多いのも事実。コーホーを釣るという意思がないと釣れないし、数が少ないこともある。釣ったサーモンを持ち帰り出来る川では、チャムやピンクはリリースしてもコーホーは持ち帰る人も多い。パシフィック・サーモンの中では味が一番美味しいからだ。サムが住んでいるナナイモは島の中心部に近く、私の住むヴィクトリアよりコーホーの魚影は濃い。北へ行けば行くほどコーホーの数は多くなる。コーホーのファイトはスティールヘッドに似たところもあり、ジャンプを繰り返したり走ったりするので面白いという人もいる。私は過去5年で4、5匹くらいしか釣っていなくて、それは意図した狙ったというよりもチャムやキングを狙っていて、たまたまコーホーが釣れたという感じなのだ。コーホーだけが集中して遡上する川で釣れば、当然釣果は上がるはずだけど、その手の川はヴィクトリアからは結構遠くなる。そういえばOPSTのyoutubeビデオで、ドライフライでコーホーを釣る方法を解説していたけど、コーホーの性格を考えると有り得ると思った。かなり昔にアトランテック・サーモンの釣りで、一匹だけディアヘアで作ったボマーというドライフライで釣ったことがあるのだけど、たぶん、基本的にあの釣り方なのだと思う。

     

     

    いきなり対岸に出て来たブラックベア。釣り人のことは全く関心がない。

     

     

    さて、今回、イヴ・リバーのコーホーの数は去年よりも多かったのだけど、ひとつのプールにせいぜい10匹前後だったと思う。それも2、3匹ずつのグループがプールに散っている感じだ。数百匹いる群れのほとんどがピンクの中で、その釣り分けは簡単ではない。今回、私とサムはそれぞれ2回ずつ、コーホーをフッキングした。サムは2度ともバレてしまった。2回目はその様子を最初から見ていたのだけど、かなり型のいいフレッシュな奴で暫くやり取りした後、強烈なハイジャンプを目の前で喰らい、首を振られて、フック・アウト。サムはかなり長い時間がっくりと肩を落としていた。私は最終日にどうしてもコーホーを釣りたいと思い、ジャークを加えた早いリトリーブを繰り返していた。ただピンクサーモンへのスレ掛かりも嫌だったので、サークル・フックを使用していた。ジャークを多用するとスレで掛かる確率も高くなる。そのせいで、最初のコーホーはファイトの途中でフック・アウト。2匹目は何とかうまくフッキングしてくれて、かろうじてランドすることができたのだった。フックはマウス下の先端の柔らかいところにしっかり刺さっていた。この位置で掛かってるケースはサーモンが積極的にフライを追った場合が多い。

     

    ざっと計ってみて30インチあったので80センチ弱かな。去年、ジェイクがここで釣ったコーホーはピンクのサイズだったことを考えるとやや大きめ。最初はフレッシュなピンクのオスかなと思っていたら、いきなりジャンプしてそのコーホー独特のシルバーの魚体が目に飛び込んできた。その段階でやっとコーホーと分かったのだけど、なんせサークル・フックを使ってるし、いつバレるのか、冷や汗ものだった。長引かせると危ないと思い、なるべく短い時間で取り込むことにした。#5のスイッチロッドのことは前回も書いたのだけど、このECHOのSR#5、中型までのサーモンには十分に使えることが分かった。#6だったら大きめのチャム、普通サイズのキングまで行けるはずだ。サーモンの釣りで軽いロッドとラインが使えるって、とても大きなアドバンテージになる。なんせ、一日中キャスティングしてサーモンを掛けてはファイトするわけで、疲労感が全く違う。正直、もう500grオーバーのラインは使いたくないという気持ちだ。

     

     

    やっと釣り上げたコーホー。10ポンド前後でまあまあの型。

     

     

    コーホーのついでにキングのことを少し書いておきたい。キングの数はコーホーよりもさらに少なく、その堂々とした大きな姿は単体でいることが多く、一際目立つ。ただ現実問題としてキングを狙って釣れるのかというと、かなり難しく、運に依るところが多いと思う。私の経験では、流れの中に定位しているキングサーモンは大きなフライよりも、かなり小さいフライでヒットすることが多いように思う。ただ緩い深めのプールで回遊しているケースでは、ゾンカーなどテールをひらひらさせたフライがよく効く。サムもこのあたりのことは十分に知っているので、ある時間、小さなフライを集中的に使ってキングを狙っているようだった。突然、「キングが来た!」とサムが叫んでから、私は自分の釣りをストップして、サムとキングのやり取りを眺めていた。フッキングして5分ほど経っても、浮上してくる気配は全く無く、サムはそのシルバーの巨体を見ることが出来ないでいる。「どのくらいのサイズ?」と聞くと、たぶん「15から20ポンド」とサムは答えた。彼の#5のビューラーのスペイ・ロッドはバットから半月の形に曲がっており、そのパワーは並外れていた。幸い、彼はコーホーとキングが掛かっても大丈夫なように20ポンドのティペットを使っていた。しかし、突然、ロッドはテンションを失ってしまった。フック・アウト?! サムがラインを回収してフライを確認するとフックの先端が折れてしまっていたのだ。キングの釣りでは、フックが開いたり、折れたりすることは時々ある。サムは暫くフックを苦渋の表情で眺めていた。

     

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