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2016.11.02 Wednesday

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    諦めきれない銀の鮭

    2013.11.23 Saturday

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       JUGEMテーマ:フライフィッシング

      カウチン川上流部のフライ専用区の岸辺は

      木目の細かい砂糖をまぶしたように一面霜に覆われており

      連日の雨で水分をたっぷりと吸った岸辺の草木は

      急激な冷込みで一晩のうちに白い結晶に包まれてしまっていた。


      車を下りる時、温度計の示した気温は1度。

      指先部分がカットされたウールの手袋はしているが当然指先は冷えるわけで

      左右の指先を交互に口元に運びハァーと温かい息を吹きかけるのだけど

      1分もすればまた指の感覚は鈍くなってしまうのだった。


      気温と水温の差が大きいためか、水面は白い蒸気に覆われており

      朝の逆光にゆらゆらと水面に浮かぶ白い物体は、ありきたりな言葉で言えば

      やはり幻想的で指先の凍えも一瞬の間だけど忘れることができた。

      写真的には絵になるモティーフなので釣りの前に数枚シャッターを切る。

      釣果が悪くても写真の素材は良いものをおさえたので、まあ、安心、などと

      最初から釣れない言い訳を用意している自分を嘲笑しながらタックルの準備にかかる。





      前回の釣行は雨に凍え、今日は強烈な冷込みに見舞われている。

      何を好き好んでシーズンが終わろうとしている状況の悪い川へ

      せっせと通うのかというと実はシーズンの最初に決めたささやかな目標があるからだった。

      島にはソックアイ、ピンク、キング、チャム、コーホーの5種類の各サーモンが遡上する。

      もちろんすべての川に5種類のサーモンが遡上するわけではないが

      今季、未熟な腕ながらこの5種目制覇をサーモンの釣りの目標とした。


      実はシーズン最初に川へ入ってくるソックアイを狙って

      8月に友人Mさんの案内で島の中央に位置するスタンプ川へ出かけたのだけど

      メインの釣り場が禁漁になっていてあえなく撃沈。

      最初から幸先の悪いスタートだったのだけど、その後は順調に

      ピンクとキングをリトルQリバーで、チャムもリトルQとスークで数を釣ることができた。

      最後のコーホーをどうしても釣り上げて5種は無理でも4種は何とか、ということなのだ。

      実を言えば、スークで産卵のため赤くボディが変色したコーホーのメスを一匹釣ったのだけど

      コーホーは別名シルバーサーモンとも呼ばれ、その銀色の美しい魚体がシンボル。

      やはりギンピカのコーホーを一匹でいいから何とか手にしたいという気持ちが強い。


      ただ残念ながら釣り場で出会うフライフィシャーたちと話していると

      今年は島全体でコーホーの遡上が例年に較べ少なくてあまり釣れてないらしい。

      それでもカウチン川の釣りの掲示板を覗くと、釣ってる人はなぜか釣っているのだ。

      やはり限られたコーホーが居るポイントを知っているか、どうかなのだと思う。

      そんな中、誰かが上流部のフライ専用区でコーホーを釣ったというレポートを頼りに

      この寒気の中、川へ立ち込んでいるというのが今の状況なのだった。





      川は通常よりもかなり増水ぎみで

      ベストな状況で現れる理想的な流れの緩急は早い流れに打ち消されていた。

      カウチン川の上流は中流域に較べほとんどバックスペースが取れないポイントが多く

      このように水位が上がると川への立ち込みも厳しく

      岸からほんの1メートル出れるか、どうか。

      キャスティングのアンカーポイントを自分の後ろに置くと

      フライは一発で張り出した樹々の餌食になる。


      川の右岸に立ち、流したラインをなるべく岸に近いところでスナップして

      スィープする距離と角度を出来るだけ稼ぎ、90度、つまり身体が対岸に向いたら

      コンパクトにキャストし、アンカーポイントを出来るだけ自分の右前に置く。

      もしくは流し切ったら右斜め前にロッドを倒してラインをセット、リバースでスィープし

      ロールキャストぎみに投げることでやはりアンカーポイントを後ろに下げないという手もある。

      いずれにしても華麗なスペイ・キャスティングは望むべくもなく

      泥臭くしかも確実に広範囲に川をスキャンできるか、どうかが

      ここカウチン川での釣果にダイレクトに繋がってくる。

      それはターゲットがサーモンでもトラウトでも同じだ。


      流れが早くチョッピーな水面からはサーモンは見えずサイトフィッシングは無理。

      川を一歩づつステップ・ダウンしながらフライを出来るだけ広範囲に流していく。

      岸際には時折産卵の終わった弱ったチャムがいるので

      なるべく岸際に近づくまえにフライのスィングを早めに切り上げてラインを回収する。

      川の真ん中付近にいる上流へ移動中のサーモンをターゲットにするのだ。





      斜め45度を過ぎるまで直線をキープしていたフライラインが

      流れを横切るため緩いカーブを描き始めるとその動きが一瞬フッと止まる。

      すぐにロッドのティップを軽く跳ね上げると張力で水面に張り付いていた

      フライラインはピシっという音を立て水滴を振り落としながら水面から一気に離れる。

      緩く保たれていたラインのカーブは一瞬で消え去り

      水中のある一点からロッド・テップの先まで一直線で結ばれ

      それと同時にロッドは弓なりにパラボリックな弧を描く。

      サーモンはフッキングされたと認識するまで1、2秒かかるし、

      その後もすぐには動き出さないので

      水中のその一点からゆっくりとした有機的な動きが

      ロッドを持つ手に伝わるまでフィッシャーは不安な気持ちになるし

      その時間は短いようで案外に長く感じてしまうのだった。


      右手のひとさし指一本でラインのテンションをキープし

      垂れ下がる弛んだランニングラインは素早く左手でリールに収納されていく。

      すぐにリールのドラッグ・ノブを30度ほど素早く回転させて

      サーモンの引きに対応できる強さにセットする。

      これでサーモンとリールがダイレクトに綱引き出来る。

      最初にラインの動きが止まってからトータルでほんの5、6秒かも知れない。


      サーモンが首を振るグ、グ、という独特な振動を手に感じたので

      スレではなくて口に掛かっているのは確かだ。ここではじめて安堵する短い溜め息が漏れる。

      しばらくやり取りして水中でローリングした魚体が一瞬シルバーに輝いたように見えた。

      が、目の網膜はその短い時間にシルバーの中にわずかなライトグリーンの色素を認めた。

      モノトーンカラーのコーホーサーモンにライトグリーンの色味は存在しない。

      落胆する気持ちをあざ笑うかのようにサーモンの強い引きは流れの勢いも加わり

      一旦リールに収められたラインをゆっくりと引き出していった。





      結論から言えば、この日もやっぱりコーホーサーモンには出会えなかった。

      釣ったのは比較的フレッシュなチャムのメス3匹で、同じ場所、ほぼ近い時間帯だった。

      たぶん最終便でやってきて上流に向かうメスのグループに当たったのだろう。


      さて。今シーズンはもうほとんど閉店のベルが鳴ってるわけだけど

      銀色に輝くクロームボディを果たして手にすることは出来るのだろうか。









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