フライでサーモンを釣るために その2
2018.09.02 Sunday
前回、フライがサーモンの層に届くラインシステムの話をしました。今回はそのフライの見せ方です。
まずサーモンに関する基本的な知識をちょっと確認。川でのサーモンは基本的に食を断ちますので、フライを食の対象としては見ておらず、ほとんど興味を示しません。むしろ嫌がります。ただ群れの中には海で食した餌の記憶からフライに興味を示す個体や、イラついて口で攻撃してくる個体、あるいは単なるリアクションで反応する個体が一定数の割合で存在します。サーモンの釣果はどれだけこの少数派に対してフライを多く見せることが出来るかに掛かってます。
次にサーモンは実際、どんな感じでフライをテイクするのか、ちょっと想像して見ます。
サーモンを釣った経験がある人なら分かると思いますが、サーモンのアタリはトラウトなどのフライをひったくるような明確なものではなくて、モヤーとしたものがほとんどです。川底の水草などにフライが引っかかった雰囲気でしょうか。フライがスィングやリトリーブの進むルートの途中でフッとストップするため、スィングならそのまま進むラインが受ける水の抵抗、リトリーブならラインのスラックが消えテンションとなって指先、もしくは竿先にアタリとして感じるわけです。トラウトの場合、自分からフライにアタックするために動き、フライをテイクした後、また元居たポジションに戻ろうします。つまりフライは通常の流れるルートから外れて急激な動きをして、それが「お、いきなりアタリがガツっと来たよ」と感じるわけです。サーモンの場合は、自らは動かず目の前にきたフライを食べるために襲うのではなくて、スっと口で止める、もしくは戯れる、もしくは苛立って口先で押し退ける、そんな動きをするのではないでしょうか。餌を追った記憶がそうさせるのか、好奇心なのか、苛立ちなのか、それはサーモンに聞いてみないと分かりません。その行動に出るサーモンですら、全体の中では少数派なはずです。ほとんどのサーモンはペアリングの準備などに集中していますから。
ここでまとめてみます。今日のお題の答えは「フライは出来るだけ長い時間、サーモンの鼻先に漂わせる」ということです。
鼻先に漂わせるとは、ゆっくりとした動きでサーモンがテイクしやすい状況を作ってあげるということ。サーモンは自分が移動してまで、フライに対する好奇心を満たそうとはしません。(例外としてはアトランティックサーモン、コーホーサーモン、サマーランのスティールヘッドがフライをテイクするために自ら移動します)フライとサーモンの距離が近いほど、テイクに繋がります。前回、スローリトリーブが大事、と書いたのはこのためでした。それとあまり重いフライは良くないと書いたのも、沈下するスピードが早くなるので長い時間漂わせのが難しくなるためです。それとサーモンに何とかアピールしようと、ミノーのアクションを加えるために必死にリトリーブしているフィッシャーがいますけど、考え方が間違っています。私はフライは一種の「猫じゃらし」だと思ってます。猫の目の前で「猫じゃらし」で遊んでいると、猫パンチを繰り出したり、何かしら興味を示しますよね。それと同じで、キラキラしたフライをサーモンの鼻先にフラフラさせることで、何かしらのリアクションを取るわけです。サーモンの動きは猫に比べてほとんどありませんが、そのマインドは同じということでしょうか。これらのことは、科学的な証拠は一切無く、色々な角度から勝手に推測したあくまで私の想像ですので、そのあたりご了承くださいね。
流れが緩い場所ではこのスローリトリーブで問題ないのですけど、比較的流れのある場所ではどうでしょうか。当然、フライをスィングさせる釣りになるわけですけど、流れの早さでよりも遅くフライを流すことは不可能です。この場合はフライをナチュラルドリフトでサーモンの鼻先を流すということになります。フライを流れに乗せてナチュラルに流すと一言でいっても、実はちょっと複雑なのです。川の流れは表層は早く流れ、底付近は遅く流れるという特性があります。フライの流し方としては表層から中層までは短時間でフライを沈め、中層からサーモンの居るゾーンにかけては出来るだけゆっくり沈めたいというのが理想。群れのサーモンはとにかく頭上の影を嫌います。特にピンクサーモンはその性質が顕著。ですからシンクティップやフライなど出来るだけ早く水中に溶け込ませてしまいたいわけです。クリアカラーのインタミラインがいかに大切か、お判りだと思います。実はキャスティング直後、ラインが表層の早い流れに引っ張られて、それにつられたフライが素早い沈下を妨げられる現象が起きてしまいます。そこでメンディングというテクニックの登場。キャスティング直後、ラインを上流側にメンディングすることで、フライが沈む時間を稼いであげるわけですね。その後、遅い流れに自然に乗ったフライはスィングを始めサーモンの鼻先をゆっくりと横切るというわけです。
私はフライがスィングし始めたら、超スローでジワっとリトリーブを加えます。これはフライに動きを与えるためではなくて、サーモンのアタリをダイレクトに感じるためです。サーモンがフライを口先で止め、それでもラインはスィングの動きを進めるため、水の抵抗をジワーっと指先に感じます。ここでいきなり強い合わせをすると、フライがすっぽ抜けてしまうことがあるので注意が必要。サーモンはフライを深く飲み込んでいるわけではなくて、口先でちょっと咥えている状態。一旦、軽くロッドを上げて「仮合わせ」します。ここでフックがサーモンに掛かったことを確認した後、ロッドを煽ることでフックはしっかりとサーモンに掛かります。これをやるとファイトの途中でフックが抜けることが少なくなります。もっとも、フッキングの仕方はケースバイケースで、アタリを感じたらすでに向こう合わせで掛かってるケースも結構ありますしね。遡上のサーモンに関しては、トラウトのようにフッキングの意識を持たなくてもいいかも知れません。
フライの流し方に関連してフロスフッキングについて書いておきます。シンクティップ、ティペット、フライが川底に平行に近い形でスローにスィング、もしくはリトリーブできるようになると、一気に釣果が上がります。これはフロスフッキングの条件が整うからです。フロスフッキングについては以前にも書きましたけど、フライがサーモンを横切る時にティペットが先に口の中に滑り込み、そのまま口の外殻にフライが刺さってしまう状況。デンタルフロスが歯の隙間に入り掃除するイメージですね。一種のスレなのですけど、アタリの出方も同じでサーモンのファイトの仕方もノーマルな掛かり方と変わらないので全く同じ、その判断は難しいです。実際にサーモンがテイクしてフッキングした際に、角にフライがずれてストップするケースもあるわけですし。ただ外側からフックが口の角に刺さっている場合は間違いないでしょう。私はフロスフッキングに関してはあまり気にしないことにしています。スレと言っても硬い口の角ですし、やわらかなボディをえぐるスレとは異なりサーモンのダメージも少ないはず。だいたいこれは予防する術がないのですから、考えても仕方がありません。
次回はフライの選択です。